ほら、笑って笑って

「お母さんは…中絶する様私に勧めた。

私自身子供だから、産んでも育てていけないし、それに……私をあんな目にあわせた、何処の誰だか分からない卑劣な男の子供だから……
これ以上私の人生を狂わせちゃ駄目だって、お母さんは泣きながら言った。」




泣きながら話すお母さん。

だけど、涙を流しながら、微笑む。




「……でも、産んだの?」


「――そうよ。」


思い出した様に自分のお腹に手を当てて、そうして呟いた。



「……守りたかったから。」


「……」



「ここに出来た、とても小さな命を…守りたかった。

あの日以来、私は外に出る事が恐くて学校にも通えなかった。
あの男達に触られた自分の身体が汚く思えて、何度も何度も…それこそ血が出るまでこすって、シャワーで流してを繰り返した。


それにね、何度も何度も…自殺する事を考えた。」





「…お母さん。」




自殺。

あまりに衝撃的な言葉に、何て声をかければいいのか分からなかった。





「でも優花が、あの子が私に、生きる力を与えてくれたの。私が生きて行く希望をくれたの。」



そう話すお母さんの目は遠くを見ていた。



優花さんを思い浮かべているんだと、すぐに分かった。



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