ほら、笑って笑って
「だけど…両親を説得する事が出来なくて、『産まれてくる赤ちゃんだって辛い思いをするから』そんな風になだめられて、中絶手術に連れて行かれたの。
そこでね、偶然にも再会したのが小峠さんだった。
彼女は診察室から逃げ出した私に声をかけてきた。
『……優子ちゃん?』
とても優しい顔で。
あの時、どうしたらいいのかわからなくてパニックになっていたから、小峠さんを見たら涙が溢れて止まらなくなって
彼女にすがりついて泣いたの。」
病院の外来受付で、沢山人が居たのに、そんな事気にもならなかったと、お母さんは微笑んだ。
お腹の赤ちゃんを失いたくない一心で、小峠さんに必死に説明した……と。
「…だけど私の話を聞く内に、小峠さんの表情が変わっていったの。
『ーーここに、赤ちゃんが…いるの?』
そう呟いて、震える手で私のお腹に手を当てた。
どうしてそんな顔をするのか、よくわからなかった。
だけど聞き返そうとした時に、私を探す両親に見つかって……」
「どうしたの?」