ほら、笑って笑って


「だけど…両親を説得する事が出来なくて、『産まれてくる赤ちゃんだって辛い思いをするから』そんな風になだめられて、中絶手術に連れて行かれたの。


そこでね、偶然にも再会したのが小峠さんだった。


彼女は診察室から逃げ出した私に声をかけてきた。


『……優子ちゃん?』


とても優しい顔で。

あの時、どうしたらいいのかわからなくてパニックになっていたから、小峠さんを見たら涙が溢れて止まらなくなって

彼女にすがりついて泣いたの。」




病院の外来受付で、沢山人が居たのに、そんな事気にもならなかったと、お母さんは微笑んだ。


お腹の赤ちゃんを失いたくない一心で、小峠さんに必死に説明した……と。



「…だけど私の話を聞く内に、小峠さんの表情が変わっていったの。

『ーーここに、赤ちゃんが…いるの?』

そう呟いて、震える手で私のお腹に手を当てた。

どうしてそんな顔をするのか、よくわからなかった。
だけど聞き返そうとした時に、私を探す両親に見つかって……」



「どうしたの?」


< 234 / 304 >

この作品をシェア

pagetop