ほら、笑って笑って
「優衣?どうしたの、こんな時間に。」
その日の夜、連絡もしないまま隼人さんのマンションに向かった。
「お母さんは大丈夫?」
慣れた手つきでコーヒーをいれながら、優しい口調で訊ねてくる。
その背中を、ただじっと見ていた。
細長い指と大きな手。
わりと日焼けした肌。
私の名前を呼ぶ、優しい声。
こんなにも、隼人さんが好き。
痛い位、どうしようもない位、隼人さんが好きなの。
「…優衣?」
返事をしない私の顔を、不思議そうに覗き込んでくる。
「何かあった?」
私を心配するその声は、何処までも甘くて優しい。