ほら、笑って笑って






「綺麗な花ね。」







突然話し掛けられ、振り返る。



「……」



そこには、長身の凛とした佇まいの女性が立っていた。



「カサブランカは優花の好きな花よ。
きっと喜ぶと思うわ、ありがとう。」



「…あの……」



お母さんよりも明らかに年上の女性。


姿勢が正しくモデルの様なすらっとしたスタイルに、品の良さを感じる振舞い。


それは、どことなく優花さんに似ていて。






私の顔を見て、やんわり微笑む。


”全てお見通し”

そんな表情に見えた。





「あなた…優衣さん、よね?」




山の涼しい風が、頬を撫で、髪をなびかせる。


まるで私の緊張を和らげるかの様な、優しさを纏った爽やかな風だった。


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