ほら、笑って笑って
ポロポロ涙をこぼす私に、小峠さんは何も言わなかった。
ただ、優しく背中を撫でてくれた。
涙が止まった頃に、ポツリと聞こえた言葉。
「優花は大人しい娘だったけど、優衣ちゃんは感受性が強いのね。姉妹でも性格は違うのかしら?」
不思議そうに首を傾げる姿すら、何だか優雅で気品が漂って見える。
「…優花さんはきっと…小峠さんに似ていたんですよ。」
そう返すと心底驚いた顔をした。
「…私?…嫌だわ、私と優花は…知っているでしょ?血の繋がりはないのよ?あの子が私に似ているなんてあり得ない。」
「そんな事ないです。
私は優花さんに会った事はないですけど、写真で見た優花さんの雰囲気と小峠さんの雰囲気、同じです。
うちの母には、気品なんてありませんから。」
顔立ちが違っても、二人は親子だった。
小峠さんは優花さんに愛情を注いだだろうし、優花さんはたくさんの愛を受けて生きていたはず。
お母さんの事も私の事も知らなくても、きっと幸せだったはずだと思いたい。