ほら、笑って笑って
「…ハヤト、あんまり可愛い女の子をいじめるな。」
さっきからずっとカウンターの中にいたマスターが、見るに見兼ねたのか彼をなだめる。
「いじめてないだろ?俺は思った事を口にしただけだ。」
悪びれるそぶりも見せない彼は、そう言ってマスターと私の顔を交互に見る。
何さ、何なのよ。
やっぱりこの人失礼だ。
心配してくれてると思ったのに、慰めるどころか人の傷口を広げる様な事言うなんて。
「もういいです、私帰ります。コーヒーご馳走様でした。」
一刻も早くこの場を去りたくて立ち上がったのに。
公園の時と同じ、
また腕を掴まれていた。
「まあ待てよ、俺はまだ君の名前も聞いてないんだよ?それに……そんなに怒る事か?」