ほら、笑って笑って





もうダメだった。



一度流れ始めた涙は止まることを知らないし、感情も抑える事が出来ない。





片付けをしている催事場スタッフに迷惑をかけないように、気付かれる前にこの場を離れようとした時だった。







「優衣……おいで」






隼人さんの優しい声が響いた。



私の様子をいつから見ていたのか?

分からないけど、隼人さんは何も聞かずに、周りから見えない様に私の肩を抱き寄せ、


「具合が悪いみたいだ」


と説明をして、私をその場から連れ去ってくれた。



私はといえば

まるで常務から私を助けてくれた、あの時みたいだと……


ぼんやりする頭で思っていた。



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