ほら、笑って笑って
「お母さん、おはよう」
「おはよう。優衣…大丈夫?」
眠れなかった。
でも、昨日の事をお母さんには言えない。
私と隼人さんの事を伝えたら、
自分のせいだと気に病んでしまう。
「何が大丈夫なの?」
「何だか、顔色が悪いみたい…」
お母さんは本当に心配した表情で
悲しそうな、辛そうな、痛々しい感情が伝わってくる。
「いつも通りだよ、大丈夫。」
私にできる精一杯の演技。
お母さんを傷つけたくないから。
隼人さんの思いを台無しにしたくないから。
無理矢理作った笑顔。
顔がひきつっていないか不安になる。
「行ってくるね」
お母さんごめんね。
今はまだ、笑顔上手に作れない、保てない。
なるべく目を合わせない様に、足早に家を出た。