ほら、笑って笑って
帰るにはまだ早い

毎日定時で帰宅したら、
それはそれでお母さんに心配される

軽くため息をつき駅前をぶらぶら歩いていると
目の前で街頭インタビューが行われていた


「この秋に行きたい場所はありますか?」

そんな質問をされた学生さんが撮影されている
何の番組なのかな?なんてぼんやり考えていると

「すみません、ちょっとお時間頂けますか?」

「…え?」

振り返ると目の前の撮影スタッフと同じ色のジャンバーを着た女性に話しかけられた

「あの…」

「この秋にお出かけしたいスポットを教えて頂いていまして、もし宜しければあちらの学生さんの後にーー」

説明していた女性に、何となく見覚えがあった
テレビで見たのかな?なんて考えていたのに
彼女の方も私の顔を見て、不思議そうな表情を浮かべる

その数秒後

「ーーもしかして、二宮隼人のモデルさんですか?」


彼女の口から出た言葉に耳を疑った
生ぬるい風が背中を撫でて一瞬クラッとした
< 271 / 304 >

この作品をシェア

pagetop