ほら、笑って笑って
…何か言い返さなくちゃ

気持ちばかりが焦って、言葉が出ない

「…あの、私」
「やっぱりそうですよね!何枚も貴女の写真が個展に出ていて、世間は気になって仕方がないんですよ?街頭インタビューはいいので、二宮隼人さんとの事教えて貰えませんか?」

グイグイ迫ってくる彼女をかわす事ができない
でも、とにかくこの場から離れないと!
何とか足を動かそうと考えていた矢先


「ごめんね、待たせて!さぁ帰るよ!」

そんな言葉と共に大柄な男性に腕を掴まれた
え?何?

「あの、お知り合いですか?」
慌てた彼女の声に、私の腕を掴み歩きながら彼は答える

「すみませんね、僕たち急いでいるので!」


そんな調子で足早にその場を去る


「…マスターさん、ありがとうございます」
「全く、隼人のせいで高原さんも大変だね」

マスターは私の腕を掴んだままどんどん歩き、
10分程で街頭インタビューの場所からはかなり離れた駅の反対側にある商店街にまでたどり着いた


「高原さん?大丈夫?」

大きな体には似あわない様な優しい声で心配そうに話しかけてくれる

「はい。助けて頂いてありがとうございました。」
「いやでも、突然腕を掴んで悪かったね。驚かせたよね?たまたま高原さんが見えて、会話が聞こえて来たから…まずいと思ってね…」


そうか、確かマスターさんと隼人さんは同級生で
きっと優花さんの事も知っているんだ
< 272 / 304 >

この作品をシェア

pagetop