ほら、笑って笑って

「高原さんの写真を個展に出した時点で、隼人には君を守る責任がある。…全くあいつはーー」
「マスターさんは優花さんの事もご存じなんですか?」

思い切って聞いてみた

そんな私の表情から何かを読み取ったのか
マスターさんは困った様な柔らかい表情を浮かべ

「…聞いてるんだね、優花ちゃんの事」

そう呟いた

「はい。隼人さんの奥様で、亡くなられた事。あと、私と似ている事とか」

「そうなんだ」

歩きながらマスターさんは高校生の頃の隼人さんの話を聞かせてくれた。隼人さんとマスターさんと、優花さんの話。でも、誰が聞いても大丈夫な差し障りのない話を選んで話しているのが分かった。

そのまま5分程歩きながら話していると、商店街の端にある公園に辿り着く

え?

公園の駐車場に見覚えのある車が停まっていて

「俺が呼んでおいたよ。さすがにさっきの報道陣に追いかけられてはいないはずだから、帰りはあいつに送ってもらってね」

マスターさんは優しい声で私に伝えて
車の助手席のドアを開けてくれた
< 273 / 304 >

この作品をシェア

pagetop