ほら、笑って笑って

「…隼人さん、迎えにきて貰ってすみません」

隼人さんの顔を見る事もできないまま謝った

隼人さんが何処までマスターさんから聞いているのか分からない。何をどうやって説明すればいいのか…



「優衣ーー少しドライブしようか」

そんな私の気持ちを察したのか
隼人さんは囁く様に言葉を落とし、車を出した


久しぶりに乗る隼人さんの車に緊張している
話す事が思い浮かばず、助手席から窓の外を眺める

静かな車内
車はどんどん街中を走り抜ける



「優衣ごめん」

「…え?」

隼人さんから出た言葉の意味が分からない
何に対して謝っているのか?
むくむくと嫌な想像が膨らみ頭の中を駆け巡る

だけど
私の嫌な想像とは裏腹に
隼人さんは左手で私の右手を優しく握る

「怖い思いさせたね…」

そう優しい声で囁きながら
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