ほら、笑って笑って
病院に着いて受付を済ませる
待合室のお母さんは浮かない表情だった

「まだ気分が悪いの?大丈夫?」
「…ううん、大丈夫よ。」

診察室の前で待っていると看護師さんが近づいて来た

「高原さん?ちょっとお話しても宜しいですか?」
「あ、はい。お願いします。」

診察前の問診かな?と考え、私は当たり前の様に返事をしたが、何故かお母さんは俯いたままで

「先日の検査結果を聞きに来られなかったので、心配してたんですよ。」
「…はい。すみません。」
「え?母はただの貧血だったと聞いてますが?…お母さん?どう言う事?」

隼人さんの個展の日…確かにお母さんは貧血で倒れた
救急搬送されてこの病院に連れて来たけど
ただの貧血だからと点滴を終えて帰宅したはず

「あの…ご家族には伝えていないのですか?」

看護師さんは気まずそうに声のトーンを落とした
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