ほら、笑って笑って
「今日は診察される予定ですよね?」
「はい。今朝貧血で倒れたので、心配で連れて来ました。」
私の説明を聞き、看護師さんは一度受付に向かった
お母さんは気まずそうに黙っている
「お母さん?お父さんには話してあるの?」
「…実はまだ、話してないの。ごめんね、情けないよね」
お母さんは泣きそうな表情で私に謝った
いつも笑顔で私とお父さんを優しく包み込んでくれる存在だったお母さん
私はそれが当たり前だと思っていた
でも、優花さんの話を聞いた時から、お母さんの過去を知ってから、辛い思いを沢山したと知ってから…
お母さんを1人の人間として受け入れられる様に変化した気がする
今なら…お母さんは怖くて、病院に通う事もお父さんや私に話す事も躊躇っていたのだと、自然に受け止める事ができる
頭の中を整理しながら、お母さんに何て声をかけようか迷っていた時
先程の看護師さんが戻って来て、黙ったままの私達に優しく話しかける
「高原さん。内科で受付されていますが、貧血の原因はおそらく先程の病気だと思われます。消化器内科に診察予定を変更しておきましたので、あちらの診察室前でお待ち下さい。」