ほら、笑って笑って
帰りの車内

私達は一言も言葉を発する事もできず

私はただ運転をして

お母さんは窓の外を眺めていた


家に着いた時にはもう14時を過ぎていて

「優衣?仕事…行ってきたら?」
「そうだね…隼人さんに連絡してみる」

お母さんに促されるまで、正直仕事の事忘れていた
隼人さんに逢いたいし、相談したい
お母さんの前では堪えている涙を、隼人さんに甘えてできる限り流してしまいたい

そんな衝動に駆られる


「ーーお母さん…」
「どうしたの?」
「嫌だろうけど…お父さんには、ちゃんと伝えないと」
「…そうよね…」


私が隼人さんに支えて貰いたいと考えるのと同じ様に、きっとお母さんにも支えが必要で
お父さんさんだっていつまでも知らないままではあまりにも可哀想だから


「今夜、話するわ」

お母さんは消えてしまいそうなか細い声で呟いた
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