ほら、笑って笑って

「お父さん、お母さん来週も受診があるから…今度はお父さんが一緒に行ってきてくれる?先生は今後の治療方針を決めたいって言ってたけど、私がお母さんと2人で決める訳にはいかないし、まだ全然頭が回らなかったから…保留にして貰ってるの」

「ああ。休みを取ってくる…大丈夫だ」

お父さんは暗い声でそう答える
私の声もきっとお父さんと同じで暗かったと思う
だからかな?
お母さんはさっきからずっと「ごめんね」と言い続けて涙を流している

「お母さん」
「お母さん…」

私もお父さんも同じ気持ち
お父さんはお母さんの隣に寄り添い肩を抱き寄せる
私は目の前にしゃがみ込みお母さんの手を握った

「お母さん…泣かないで」

お母さんの手はひんやりして冷たい
その冷たさが、いなくなってしまうかもしれない不安な気持ちを煽って私の涙腺を緩ませる


「お母さん、大丈夫だよ」


大丈夫と言うお父さんの言葉にお母さんは返事をしない


今日の医師の話を聞いて、大丈夫なんて思えない
それは、私も同じ
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