ほら、笑って笑って
ただ、会いたくて
「いらっしゃい……あれ?確かこの前の…」
「…はい。先日はすみませんでした、なんだか失礼な帰り方をしてしまって。」
「いやいや、俺は構わないよ。あれは意地悪な言い方をした隼人が悪いし。」
あれから毎日、色々悩んだけど、結局この店に来てしまった。
もちろん、名刺に書いてある携帯番号に電話をかける勇気は出なくて、ただ休みの日にコーヒーを飲みに行こうと決めただけ。
会える保証なんてない。
多分、会えない可能性の方が大きいだろう。
それでも、ここに来るだけで手に汗をかきそうな位緊張した。
だけど、マスターが私を覚えていてくれた事が嬉しくて、少しずつ肩の力が抜けていく。
そして、カウンターに座った私に水を出しながら、微笑むマスター。
「……で、今日は待ち合わせ?」
「ち、違います!!あの、その、コーヒーが美味しかったから…だから」
ぶんぶん首を横に振りながら、慌てて弁解する。
するとマスターはくすっと笑って言った。
「でも…この時間帯、多分隼人来ると思うよ?」
「……え?」
心臓がドキンと跳ね上がった。