ほら、笑って笑って

「…俺としては、ユイちゃんが会社に居づらくなる前に退職した方がいいと思うけど。でも、それはユイちゃん自身の問題だから。どうするかは自分で決めた方がいいと思う。」



隼人さんは、そう諭す様に私に話し掛ける。




なんでだろう。


なんで、こんなにも優しいの?

その話し方も、その行動も。


普通ならお姉さんである社長の味方のはずなのに、わざわざこんな事を私に教えてくれるなんて。




「どうしてですか?どうしてわざわざ、私にこんな事を」


教えてくれるのか?
尋ねようとした私の言葉を遮り、隼人さんは言った。


「姉貴にも、ユイちゃんにも、傷ついて欲しくないから。」




それは、遠くを見る様な寂しそうな顔。

どこか脆く、消えていなくなってしまいそうな……そんな表情だった。






そして、そのまま押し黙ってしまった隼人さんに、話し掛ける勇気もなかった。

本当は川野先輩の事とか、隼人さんの事とか、聞きたい事は沢山あったけれど。
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