ほら、笑って笑って

「ああ、そうね。ケーキを予約してあるの。」



そっか、今日予約のあったデコレーションケーキ、確か”二宮様”ってメモが貼ってあった。




「わかりました。ご予約の二宮様ですね………え?」


なんで――二宮様?

明らかにおかしな顔をした私を見て、社長はクスッと笑った。



「気が付いた?二宮は私の旧姓。………彼とは離婚したのよ。」



少し寂しそうな、それでいて私を試す様な表情をして、社長は呟いた。


そして、”どう思う?”とでもいいたげな顔で私を見てくる。





足元から震えが来た。


突然、恐くなった。


だって……私のせいで、社長の家庭を壊した?


赤ちゃんだって生まれてるはずなのに……。



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