ほら、笑って笑って
重厚な木のドアを開く。
――カラン カラン
懐かしい音がした。
「いらっしゃいませ。」
カウンターの中には、優しい笑顔のマスター。
私を見てすぐに気がついたらしく
「……彼女もうすぐ来ると思うから、ここに座って待っていてあげて?」
そう言ってカウンター席を勧めてくれた。
「…ありがとうございます。」
社長から聞いているんだ。
私が来る事。
待ち合わせした事。
じゃあ、これから話す会話の内容も…。知ってる?
手にギュッと力を入れて自分を奮い立たせる。
落ち着いて、落ち着いて。
しっかりしなくちゃ…。