ほら、笑って笑って
ゆっくりと席に座った。
カウンターに両手を置いて、俯いて呼吸を整える。
落ち着いて。
大丈夫。
とにかく誠心誠意謝らなくちゃ。
何度も自分に言い聞かせた。
「はい。どうぞ。」
声をかけられ顔を上げると、マスターがにっこり笑っていた。
目の前には温かい湯気が上がるカフェオレが置かれている。
「…あ、あの――。」
私まだ注文していないはず。
不思議に思ったので尋ねようとしたら、
「温かくて甘い飲み物は、心が落ち着いて、温かい気持ちになりますよ?」
そう言って笑った。