ほら、笑って笑って


「マスター、ブレンド下さい。」


そう言いながら、社長は私の隣のカウンター席に座る。



「かしこまりました。」


マスターはにっこり笑って、ブレンドを作る準備を始める。


そしてマスターの目線が私達から離れたのを確認してか、社長が口を開いた。



「本当に来てくれるとは思わなかった。」


くすっ と笑いながら。



その笑みがどういう意味なのか判断出来なくて、とても怖くなる。


何を考えて、笑ったの?



「そんなに怯えないで?――…私、慰謝料請求したり、訴えたりしないわよ?」

「……え?」



意外な言葉に驚いてしまった。


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