ほら、笑って笑って
「…嫌味…ですか?」
「そうよ。嫌な女かしら?」
「いえ!そんな、とんでもない!……嫌味なんかで済む事だとは考えてませんし。それに私は…最低ですが、不倫だと知りながらも……常務の事真剣に好きで、社長の妊娠がなければ、あのまま関係を続けていたかもしれません。」
そう。
あの時は真剣に愛していたし、常務も私を愛してくれてると信じていた。
「――そうみたいね?」
「…え?」
社長は前を向いて、カウンターに肘をついていた。
そして、白くて長い綺麗な指で自分の髪をすきながら、遠くを見ている様に微笑んだ。