ほら、笑って笑って

聞いて欲しい事?


…――何だろう?


一瞬、心臓がドキンと音をたて、ヒヤリと背筋が凍る。



だけど、社長はそんな私の不安を感じ取ったのか、くすりと笑う。




「大丈夫。多分、あなたが考えている様な話じゃないわ。――…聞いて欲しいのは、弟の事なの。」



「え?…隼人さん…ですか?」




違う意味で、また、心臓がドキンとする。


その名前を耳にするだけで、鼓動が速くなる。



頬が自然に赤らんでしまいそうだから、意識して冷静を装う。






「…やっぱり、隼人と知り合いなのね。」


社長はぽつりと呟いた。




「あの、知り合いと言いますか…その…。」



つい、口ごもる。


"助けて貰った"

と説明したいけれど、常務との事を話さなければいけなくなる。



何て言えばいいんだろう…?


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