ほら、笑って笑って

「どんなって……あの子、あなたに断りもしないまま現像したって事かしら?
――おかしいわね?今までそんな事は無かったのに――」


そう言いながら、社長は不思議そうに考えこんでしまった。



「いつも、一言お願いしてから撮影しているんですか?」



確か私の時は、顔を上げたら突然シャッター音がして……



「いいえ。正確に言えばシャッターチャンスに撮らして頂いて、気に入れば後で了解を得て現像しているみたい。……それから、個展に出したり――」



個展!?


隼人さんは、個展なんて開いちゃうくらい凄いカメラマンなの!?


確かにデジカメの画像を見ただけでも凄いとは思ったけど。


でも私、名前すら知らなかった。




一人地味にショックを受けていると、カウンター越しにマスターが話し掛けてきた。



「本人に、確認してみればどうかな?」


「……え?」


「そうね、聞くのが一番だわ。」



動揺する私の隣では、さも、名案とでもいいたげに、社長が相槌を打つ。



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