ほら、笑って笑って
「高原さん?どうして?」
社長は、理解出来ないといった表情をして私に問い掛けて来る。
カウンターの中のマスターは、ただ黙ってこちらの成り行きを見守っている。
……うう。
なんとも説明しにくい。
でも、どうにかして分かって貰わないと。
俯いて、ギュッと手に力を入れ、考えながら言葉を落とす。
「会わす顔が無いんです……。」
口から落ちた言葉は、自分でも驚く程、とても小さくて……。
「…え?ごめんなさい、聞こえなかったわ…」
なんて社長に言わせてしまった。
だから、
今度は顔を上げて、社長と目を合わせた状態で口を開いた。
「常務との事で、ご迷惑ばかりかけたんです。それなのに、こんな私を心配してくれたとても優しい方です。社長にも、私にも、傷ついて欲しく無いと言ってくれました。
でも私は、社長にも隼人さんにも迷惑かけて……。
自分が情けなくて、嫌いで、もう会わない様にしようと思いました。
だから、突然の事とはいえ、今日も――」