水とコーヒー
#7
どれだけ泣いただろうか。10分か20分か。ようやく落ち着いたが人間とは厄介なもので、涙を出せば洟もでてしまう。

テーブル上のペーパータオルで洟をかもうとしたのだが、手を伸ばそうとすると先輩が「使いなさい」とポケットティッシュとハンドタオルを差し出してくれた。「別に返さなくていいからね」と笑って付け加える。

その声と表情はどこまでも優しく、それがまた僕の“泣き”を延長させた。

今度こそようやく落ち着くと、先輩は「もう大丈夫かな?」と少し軽口のような口調で僕に尋ねた。

「…大丈夫です。すみません、なんかよくわかんないんですけど、取り乱しちゃって」

「うん。大丈夫よ。キミみたいなタイプは、そうなんだってわかってるから」

「…どういうことですか?」

わけがわからなかった。

「んー…その前に、もう大丈夫なら飲み物とってきてくれないかな。キミも喉乾いたでしょ?」

「あ、はい…先輩なにがいいですか?」

「あったかいコーヒーとお水をお願い。あ、いっぺんには持てないか。あたしもいくよ」

そういって先輩も席を立つ。2人でドリンクバーに向かうと、僕はコーヒーマシンの前でホットコーヒーのスイッチ押す。ガーッというミルの粉砕音を聞きながら、タンブラーからよく冷えた水をグラスに注ぐ。

「ウーロンでいいのかな?」

先輩の声に頷くと、先輩はさっきまで自分が飲んでいたオレンジジュースを左手に持って右手でドリンクバーを操作しながら烏龍茶をグラスに注いでいた。
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