水とコーヒー
こうして僕らは合計四つのグラスを手に一つずつもって、また奥まった四人がけの席に戻った。

先輩は僕の方に烏龍茶のグラスをおき、そして自分の前にオレンジジュースをおいた。僕は自分の両手に持っていたホットコーヒーと水をどうすればいいのかわからず、とりあえず先輩と僕の真ん中に置こうと思ったのだが、先輩はそれを察したのか場所を指示した。

「ああ、それはね、窓際の方に並べておいといてね。あたしちょっとトイレにいってくるから、まぁ飲んで落ち着いてて。一服してもいいし」

なんともサバサバした態度で、先輩は席につかずポーチを持つと化粧室へと向かった。そんな先輩の背中を見送ってから、テーブルの上に置きっぱなしにしていたタバコとライターに目を落としたが、何故か吸う気にはなれない。

僕はメニュー立てやら店員呼び出しボタンが置いてある前に並べられたコーヒーと水を見て、ぼうっと頬杖をついて先輩の帰りを待っていた。


先輩が戻ってきたら聞きたいことが沢山あった。話したいことも。

一番の疑問はあの人が誰なのかということ、そして何故僕にツいていたのかということ。ただ「終わった」のだということだけは僕が一番よくわかっていた。

コーヒーからは湯気がゆっくりと立ち上っては空気に溶けていく。冷たい水の入ったグラスには湿気がまとわりついて、少しずつ水滴を浮かせる。

僕はそんな風景をぼうっと眺めながら、先輩の帰りを待っていた。ほどなく「ただいま」という声とともに、向かいの席に先輩が滑り込んできた。
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