水とコーヒー
「うーん…どうしても知りたい?」

先輩は少し困った様な表情を混ぜた微笑で僕を見返した。どうしても?確かにそういわれれば「終わった」今となっては、必要のないことなのかもしれなかった。これ以上はただの好奇心だ。

だけど僕は見覚えもない女性にツかれていたわけで、被害者で…彼女は光の明るい方にいって、それで終わったかも知れないけれど、僕の方はどうしてももやもやとしたものが残ってしまう。

だから僕は、あまり力強くはなかったが、黙って頷いた。

「そっか…まぁでも知る権利はあるかもね…」

そういうと呼び出しボタンを押して、店員にオーダーを伝えてそれを見送ってから、ため息を一つ吐いて、先輩は語り出した。

「これから話すことは、出来ればたとえ話として聞いてね」

「…はい」

「あのね、人生がさ、なんていうか不幸の連続とかでね、どうにもこうにもならなくなって絶望したときに、誰かの優しい言葉に励まされたら、その人に対してどう思うかな」
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