水とコーヒー
「先輩、最後にいくつか質問いいですか?」

「んー…さすがに眠いから、応えにくくないのならいいわよ」

「すみません…えと、あのコーヒーと水ってなんだったんですか?」

僕は一つめの質問をぶつけた。

「ああ…あれはキミの考えてる通りのものよ。彼女、コーヒー好きだったのよ。それとお水は、まぁご供養ね」

「ああ…なるほど」

今更ながら、先輩はそういう人なのだと、そして僕はそういう体験をしたのだと再認識した。続けてもう一つ。

「先輩がトイレにいって戻ったとき、僕がタバコ吸ってなかったのを嬉しそうにしてたのは?」

「あー…ほら、キミ云ってたじゃない『自分も食事中にタバコ吸われるのはイヤだ』って。だからよ。彼女の為に用意したいれたてのコーヒー。そのそばでタバコふかしちゃ、ね。キミは霊感なんかまるでないっていってたけど、それでもわかったんだなって思ったの」

「じゃあ…あのとき…」

「ん、大半は明るい方にいってたけど、まだ少し、ね。ああでも、未練とかじゃないのよ。お礼っていうか、感謝っていうか…そんな感じでね。あたしがケーキ食べ始めた頃には、すっかり上にあがっていたし」

「そうだったんですか…」

「うん。そうだったの」
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