水とコーヒー
「なんかあべこべっすね」

「ん?なにが?」

「や、食事に誘ったの僕なのに。先輩に車出してもらって迎えに来てもらってって」

「あはは!そういえばそうねえ。でもまぁ必要なことだから」

「そうなんですか?」

「そうよー。それにほらちょっと時間かかるかもしれないからね」

「時間が…?」

「うん。だから車。心配しなくても帰りは送っていくから。B町でしょ?」

「え、いやいいっすよ。タクシー拾いますし」

「まーまーいいから。その代わりご飯頼むわよー」

「あ、任せてください。コンビニでおろして来ましたから」

「あははは!どんだけ食べると思ってるのよー?」

「あ、いや、そんな意味じゃ…」

「まぁまぁ。で、何食べたい?それとも任せてもらっていい?」

「あー…もちろん、お任せします。ここいら土地勘ないですし。先輩の食べたいものでいいっすよ」

「そう?それじゃあそこにしようかなー」

そんな会話や会社での四方山話をしながら車は見覚えのある番号をつけた国道へと進んでいった。十五分も走っただろうか。ついたのはどこにでもあるイタリアンチェーンのファミレスだった。

「え?ここでいいんですか?」

「そうよー。あら、イヤだった?」

「や、そんなわけじゃないすけど。結構よく来ますし」

「じゃ、いいじゃない。さーいくよー」

先輩はさっさとキーを抜いて車をおりてしまう。慌てて後を追う様に車を出ると、追いかけるようにファミレスへ入っていった。
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