センチメンタル自販機
「あ、もしかすると財布持ってないとか?」

「ぇ、ぁ、あの」


恐る恐る、声のした方へと向き直ってみる。

声質から察したとおり、そこには男の人が立っていた。

あたしと同じ学校の制服を着た、男の人。


「よっと」


慣れた手つきで一番右端の自販機に硬貨を投入し、迷わずにボタンを押した彼は、下の取り出し口より落ちてきた缶を取り出す。

咄嗟の切り返しが全くできないあたしは、ただ、彼の動作を眺めていた。

< 4 / 46 >

この作品をシェア

pagetop