センチメンタル自販機
とりあえず、彼を真似て缶を振ってみる。

一回、二回、三回、四回──。


「ににんがしー、にさんがろくー」


──ろっ……五回、六回、七回、八回。


「さざんがきゅー、さんしじゅーに」


九回、十回、じゅういっ…………。


「ししじゅーろく、しごにじゅー」

「あ、あの」

「何?」

「その……急に九九の暗唱なんて始められると──」


ちゃんと数が数えられなくなるでしょう、このスットコドッコイ。

言いかけて、余りにはしたない言葉だということに自粛。

名前も知らない彼は、私が言いかけた続きを察しているのか、再び笑ってみせた。


< 7 / 46 >

この作品をシェア

pagetop