イラツエ



ルゥディー

ルゥディー、ルゥディー、ルゥディー


やっと呼んでもらえた。

何度夢に見ただろう。


幼い彼女しか知らないから、ずっとあの時のままの彼女を思い出していた。



成長した彼女はあの頃の面影を色濃く残していたけれど、とても可愛く成長していた。

漆黒の髪と濃い紫のつぶらな瞳。

あの小さな赤い唇から名を呼ばれるのをずっと待っていた。

もっともつとずっと、今までの分を取り返すように、繰り返し呼んでもらいたかったが、眠そうに目をしばたかせる幼い姿に流石に理性が勝って解放する事にした。

薬の為かあっという間に寝るまで、無防備な頬や髪を触り放題して名残惜しくも渋々部屋を後にした。

屋敷で一番厳重な最奥の部屋。
彼女は逃げ出そうと機会を伺っていたようだが、仮に部屋のドアや窓から逃げだそうとしても、僕が張った結界が施されているので、僕が手順を踏まないと出入りは出来ない。

可哀想だけど、僕の安心の為に我慢してもらうしかない。
彼女が逃げたにしろ、連れ去られたにしろ、2度目の彼女の失踪に正気でいれる自信がないのだから。


最奥の部屋から本館の応接室に向かうまでの長い廊下には警備兵も数人待機させている。
全て万が一も起きないようにだ。


『さて、では昨夜の後片付けでもするかな』

それが終わったらまたリリーの元へ帰ろう。

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