ｲﾗﾂｴ
人間が金属の塊でアタシを仕留めようとしているのが分かる。
血の流れるスピードが速く、思考はまとまらない。
距離を取り、体勢を立て直したい。
どくり。どくりと心臓が時間がないと喚くように鼓動しているのが耳奥まで伝わる。
ガラスと木枠で出来た引き戸を体当たりで破ると長い廊下を飛び降り庭に下りる。
アタシを追って人間も出て来るとまた金属の塊で攻撃してくる。
肩をかすめていく。
アタシは筋肉が何本か切れているだろう四肢にもう一度力を込めて跳躍をした。
屋敷を一周する壁に上る。
ぜぃ。
喉に血が溜まっているせいなのか、器官がおかしくなったのか、息をすると変な音がする。
此処からもう一度奴の喉笛を狙うか…。
どうせ死ぬなら標的は無理でも奴の喉笛くらいは…。
足場を安定させようと、ずらした後ろ脚に何処かから矢が飛んできた、ずるりと滑る。
くらりと体が反転した。
きらりと目に入ったのは、朝日だったのか、また金属から飛び出たものなのかは、分からなかった。
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表紙・目次

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