キミに宛てた手紙
何かを言いかけて、それをやめるかのように、女性は少しだけ開いた口を閉じた。何かを思案して、それから、
「……ねえ、あの子の日記、どうしたのか聞いてもいいかなあ……?」
「構いませんよ。リカの日記も、手紙も、たいせつに保管してありますよ」
丁寧に箱にしまってから、一度も開けてはいない。押入れのすぐに目のつく場所に、置いてある。
でも、触れることはできなかった。埃がかぶっているのが、想像できた。
その埃は、確かに月日が流れたという事実をつきつける。
「そう……」
沈黙。
どんな言葉を言えばいいのか、思いつかない。目の前の女性も同じ気持ちだろう。
沈黙をやぶってくれたのは、18時を告げる音楽だった。
「あっ、もう行かないといけないんだった……ごめんなさい」
「あのっ……ひとつだけ聞かせてくださいっ」