キミに宛てた手紙

「もう過去のことになってしまうのね……君はとても優しい子。自分を責めてしまわないで。あの子はそんな事、望んでないわ」

そう言って、莉緒さんは僕の頭を撫でた。

「むしろ君にはお礼を言わなきゃいけないのよ。あの子のそばにいてくれて、ありがとう」

莉緒さんは、綺麗に笑った。
それでもその笑顔は、どこか悲しげなものに見えた。

【僕は何の力にもなれなかった】

そんな言葉が吐き出されてしまいそうだったが、必死に抑えた。

優しくもない。
なにもできない。
だから、お礼なんて言わないで欲しい。

莉緒さんはあっという間に、人混みの中にまぎれていった。

僕はまた歩き出す。
周りに合わせたペースではなく、わざとはずしたようなスローペースで。

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