夏色のキミ〜sea side


終業式が終わり

置きっぱなしだった教科書を鞄に詰めていると
ふと、机の上に影が落ちた。



「純、どしたの?」


見上げて言うと
純は ふ、と私から視線を外した。


そして


「今年、行く?」


小さな声でそう呟いた。


何の事か分からず、何が? と尋ねると


「花火だよ、花火」


と早口に返ってきた。


花火って…



「…去年行った海の?」


目をしぱしぱさせながら訊くと
おう とぶっきらぼうな返事が返ってきた。



まさか誘ってくれるなんて思ってなかったし

そんな事訊かれるとも思ってなかったから

私は うん と短く答える事しか出来なかった。



「じゃあ、また連絡するから」



それだけ言うと 純は教室を出て行ってしまった。



純の後ろ姿が消えた教室の出入口を

私は 一時の間
ただぼうっと見ていた。



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