夏色のキミ〜sea side
「はい」
低い声と共に
横から差し出されたいちごオレ。
顔を上げてみると
「間違って押したから、あげる」
青島純っ!
「え、え?」
驚きと戸惑いを浮かべた私の顔を茶色い瞳で見つめ 彼は ふ、と笑った。
「いちごオレ売り切れてそんな落ち込んでる奴、初めて見た」
そう言って笑った口元から見える白い歯
細めた目は 優しく、
まるで純粋な子供のようにあどけない。
―夏空みたい
瞬間、そう思った。
彼の何がそう思わせたのかは分からないが、私はただ漠然とそんな事を思った。
“喧嘩ばかりで暴走族にも入ってて…”
本当に彼がそうなのか?
青島純の笑顔を見て
思った。
「いらねぇの?」
何も言わない私に
青島純はいちごオレに視線を落とし 紙パックを左右に振る。
はっとして
私はいちごオレを手に取った。
「あ、ありがとうっ」
そう口にすると
どういたしまして
と、青島純は食堂を後にした。