夏色のキミ〜sea side


人ごみをかきわけながら 純が足を止めたのは
歩き始めてから十五分ほど経った頃だった。


辺りを見回してみると
さっきいた砂浜よりずっと離れた所に居た


下ばかり見ていたせいでどこを歩いて来たか分からなかったが
着いた場所は海に飛び出た波止場だった。


沖合いにはちらほらと漁り火が焚かれ
砂浜の方には屋台の光や大勢の人が見える。



「いい眺めーっ 穴場だね」


「いいだろ。ついこないだ見つけたんだ」


自慢気に話す純に 私は疑問を抱いた。


こないだ見つけたって
誰と、何しに来たんだろ?


もやもや そんな事を思った。


けど 口になんて出せない。


「…それにしても、すごい人だね 砂浜が人で埋まってる」

気分を切り替えて、もう一度辺りを見回す。


けど やっぱり何か心に引っ掛かるな…


いや、せっかくの花火大会なのにそんな事考えてちゃ駄目だよね


楽しまなきゃ。



と、その時





「亜紀っ」



急に名前を呼ばれ 純の方に顔を向けた。





―ドン…っ!



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