夏色のキミ〜sea side
闇夜に打ち上がる
煌びやかな花。
お腹の底から伝わる振動と 何発も打ち上がっていく花火に
私は目を奪われた。
去年よりも遥かに近く見えて まるで花火が頭の上に降ってきそう。
こんなに近くで見た事がない私は さっきまでやきもきしていたのも忘れ
ひたすら空を見上げていた。
「びっくりした?」
一旦花火が終わると 純は地面に腰を下ろした。
私も少し距離をあけて、その隣に腰を下ろす。
「びっくりしたっすごい近いね!降ってきそうだった」
興奮気味に喋る私を見守るように 純が微笑む
「そりゃ良かった」
ポケットから煙草を取り出し、ライターで火を点ける。
純が吸い込んだ煙を 気持ち良さそうに
ふー と吐き出すと
白い煙がふわりと夜空に消えていった。
そんな姿を見て、ふと思った。
「純 煙草って、おいしいの?」
「え?」
急に何だ と不思議そうに私を見つめる純。
だって 純があまりにもおいしそうに吸うんだもん
「うまくはないな。別に」
「ふーん…じゃあ何で吸うの?」
「何でって…もうヤニ中だから」
「ふーん…私にも一本ちょうだい」
「無理」
即答する純。
何で と、むくれる私に純はしれっと言った。
「体に悪いし、俺みたいになったらどうすんだよ。もし学校で見つかったら停学だぞ」
「でも純は吸ってるじゃん」
「俺はいいの」
「…ずるい」
「俺、亜紀が停学とかになったらやだし」
……え?
それってどういう意味…
海を見つめながら考えていたら
「亜紀」
優しい声に呼ばれ
純の方に顔を向けると
純は真っ直ぐ、私だけを見ていた。