夏色のキミ〜sea side


射ぬくような 真っ直ぐな瞳に

目を逸らせない。



純は ゆっくりと口を開き 何か言い掛けたが



―ドォン…っ



花火が上がり、言うのをやめてしまった。


純が諦めたように口をつぐみ空を見上げるから
私も空へと視線を変えた。



…何を言い掛けたんだろう


あんな真っ直ぐな瞳で 純は何を伝えたかったんだろう


私は、打ち上がる花火を見つめながら その事ばかりが頭を巡っていた。







「そろそろ終わりだな」



純は腕時計を見てから 地面で煙草をもみ消した。


「去年は ラスト見られなかったもんな」



そう

去年は純が絡まれて それどころじゃなかった。


あの時は 純が心配で一人で不安になってたけど
今年は純が隣に居る。


まさか今年もこうして一緒に来られるなんて
思わなかったよ





―ドンドンドン…!



轟音と共に
フィナーレの花火が打ち上げられた。



さっきまでとは比べものにならない数の花火が次々と上がり、
暗い夜空に 何色もの鮮やかな華が重なるように咲き乱れる。


「わ、すごいっ 綺麗ーっ」


瞬きを忘れるくらいの 美しさとその迫力に
私は夢中で見入っていた。


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