夏色のキミ〜sea side

面と向かって話をしても青島純は花弁の事を何も言わなかった。

って事は
花弁をあげたのが私だと覚えてなかったようだ。



「あれ?買えたの?」


テーブルに置いたいちごオレを見て、さくらが言った


ガラガラと椅子を引く私が
どうして?
と言うより先に、彼女は理由を話した


「さっき隣に座ってた女の子が いちごオレ売り切れだって言ってたからさ」


不思議そうに言う彼女に
私はお弁当を広げる

箸を持ってから少し早口で答えた。


「うん。売り切れだったんだけど貰った」


「え?誰に?」


当然返ってくるだろう質問に 私は玉子焼きで自分の口を塞いだ


もぐもぐと口を動かし、完全に飲み下した後 呟くように言った。



「青島 純」



さくらは目をぱちくりさせながら 何で?と言いたそうに首を傾げた。



「間違って押したからって」


またもや早口になる私


自分の口から彼の名前を出すのが、何でだろう

少し恥ずかしい。



私にその答えが分かるのは、まだちょっと先の事だ。


「ふーん…?良く分かんないけど、ラッキーだったね」


そう聞いて

桜の花弁はラッキーのうちに入るのかな と思った。


そりゃいちごオレはラッキーだったけど

花弁ってどうなんだろう


捨てるのも申し訳なくて ポケットに突っ込んであるけど、花弁の活用法なんて

私は知らない。


お母さんが居れば 押し花でも教えてもらうのにな


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