夏色のキミ〜sea side
「はあ〜お腹いっぱい」
外に続く食堂の出入口を出ると
暖かな木漏れ日が私達を包んだ。
心地よい気温に
ぐん、と背伸びをする。
「小春日和だね〜どっか遊びに行きたい」
空を見上げながら目を細めるさくらに
私は激しく同意した。
こんなにいい天気なのに
教室に籠もって勉強なんてしてらんないよなぁ
かと言って 遊びに行くお金もないし…
早くバイトしたいな
そしたらあの人に携帯代で文句言われなくなるし…
早くお金貯めて あんな家出て行きたい。
そんな事を考え出すときりがなかった。
ついさっきまではいい気分だったのに
家に帰る事を思うと、急に気が重くなる。
学校に居る時だけは考えたくないのに…
「あれ、青島純と坂上君じゃない?」
さくらの言葉に反応出来ず、まだモヤモヤする気持ちを抱えたまま
何で青島純だけフルネームなんだろう と他人事みたく、そう思った。
「ちょっと、お礼してきたら?」
さくらに肩を叩かれ
はっとなった。
「え?お礼?何が?」
訳が分からずさくらを少し見上げる
彼女は私より7センチほど背が高い。
「いちごオレのお礼だよ」
そう言って足を止め
裏庭に目を向けるさくら
その視線を追うと
しゃがんで座り込む青島純と、花壇の端に腰掛ける坂上建斗が楽しそうに何かを話していた。
黙ってその様子を見つめている内に
彼らは立ち上がり 裏庭の奥へと歩き出して
見えなくなってしまった。
「ほら、行っちゃったよ?ジュースのお金渡してないでしょ」
「え?あ、ちょっと」
ずるずるとさくらに引っ張られ、彼らの後を追う。
直角に曲がった角から顔を出したのと
苦い匂いに気付いたのは
ほぼ同時だった。
「……あ」
私とさくらを見て
坂上建斗が 目を丸くして短くそう洩らした。