夏色のキミ〜sea side

別れ




「亜紀、ちょっとは食べろよ」



お兄ちゃんが心配そうに私の顔を覗き込む。



「…いい…」


力なくそう言って 私は布団に潜り込んだ。



「冷蔵庫に亜紀が好きな駅前のケーキ屋のプリン買ってあるから、後で食べろよ」


「うん…ありがとう」


「…じゃあな。また来るから」


私の頭をくしゃくしゃしてから
お兄ちゃんは部屋を後にした。


お兄ちゃんはこのところ
仕事前と仕事後

朝夕毎日家へ来る。


疲れてるはずなのに
今日みたいに手土産を持って
毎日毎日私の顔を見に来ている。


お父さんだって 仕事があるのに毎日家事をこなして ご飯を用意してくれる。


だけど、そのご飯がどうしても喉に通らない。


家族に迷惑ばかりかけているのは分かる。


でも

もう無理なんだ


私には純がいないんだから。


困った時に手を差し伸べてくれて
背中を押してくれて
温もりや優しさをくれていた純が

もう いない。


もう


私の傍に居てくれない。


太陽みたいな笑顔が
見れない。

優しい声が
聞けない。

温かいぬくもりに
触れられない。



純が


もういない―………



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