夏色のキミ〜sea side


―カチャ…



部屋のドアが開き
お父さんがご飯を持って来たのかと思い、目を瞑る。


「……」



いつもなら私が寝ている時はすぐに出て行くのに
何故か今日は出て行く様子がない。


不思議に思って
そっと目を開けてみると





「あ、起きた」



そこには 久しぶりに見る顔があった。





「建斗…!?」



「おう、久しぶりやな」


驚いて体を起こす私に
にか と歯を見せて笑う建斗。



「な、何で!?」


「お兄ちゃんが俺の顔覚えてて入らせてくれてん」



あ そっか

お兄ちゃん 建斗と会った事あるんだっけ。



って そうじゃなくて!



「何で来たの!?」


「いや、どうしてんかなと思って」


静かに腰を下ろして
穏やかに微笑みながら
私を見つめる建斗。


「亜紀、大丈夫なんか…?」


そっと見守るような 優しい声。


胸が じいん と熱くなって 目からは自然に涙が零れてきた。


純と別れてから
涙は枯れるほど流してきたのに どうしてだろう


どれだけ泣いても
涙は出てくるのかな…


時が経てば忘れられるって 私、全然純の事忘れられないよ…



苦しい



どうすれば
忘れられるの…?


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