夏色のキミ〜sea side



「……よし」



花火大会当日。



何度も鏡を見て 髪の毛や化粧をチェックする。


服は去年着ていたシフォンの白いワンピース。


純が可愛いって言ってくれたから
これに決めたんだ。





家を出てから近くの駅まで歩いて 電車を乗り継ぐ。


電車の中には
ちらほらと浴衣姿の人がいて、浴衣もいいなあと思った。



二回電車を乗り継ぎ
着いた駅を下りる。


海までの行き方が分からなかったけど
浴衣姿の人がぞろぞろと歩いていたので
その人達についていった。


十五分ほど歩くと 海と国道が見えた。



懐かしいなあ…



去年にも来たはずなのに
何故だかその風景が懐かしく愛しく感じる。


去年は純がバイクで来てくれて この国道を通ったんだよね…

その前の夏は純が汗だくになりながら
自転車で来てくれたんだっけ



そんな事を思い出しながら暫く海を眺めていた。


湾曲を描いた海辺には 沢山の屋台が並び
暗くなっていく内に段々と人が増えてくる。



時計を見ると 七時を回っていた。



あと十分もすれば花火が上がる。



……純…


お願い。

来て…





祈りながら景色を眺めていたが

純はとうとう 花火が中盤に差し掛かっても現れなかった。



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