夏色のキミ〜sea side
「……どっか…場所変えるか」
優しい声で私の肩をぽん、と叩く純
その声は
別れてから 一番優しく私の耳に響いた。
“海に行きたい”
そう言った私に 純は少し考えてから
分かった と言ってくれた。
純と もう一度だけでも
あの場所に行きたい。
思い出の詰まったあの場所に―……。
バイクに乗る 純の後ろ姿
その背中はあの時と何も変わらないのに
私達はもう 恋人同士でも何でもないんだね…。
海に着くと
私達は浜辺に腰を下ろした。
―ザザ…ン
誰もいない静かな海には
打ち寄せる波の音だけが聞こえる。
先に沈黙を破ったのは
純だった。
「……亜紀とこうしてるの なんか久しぶりだな」
「え?」
純の方に顔を向けると
視線が返ってきた。
「亜紀…ちょっと太ったんじゃねぇ?」
私の頬をつまみながら
悪戯に笑う純。
たったそれだけの事なのに
涙が出るくらい嬉しくて
私はたまらず 純に抱きついた。