夏色のキミ〜sea side
彼は目の前まで来ると
私の手をとり、手のひらにそっと
桜の花弁をのせた。
「あげる」
それは
三年前にも言われた 言葉。
手のひらにのせられた花弁を見つめていると
ふと
彼の左手にはめられたシルバーの指輪が目に入った。
それは
私の薬指にはめているのと同じ物だった。
「……じゅ…ん…」
途切れ途切れにそれだけ言った私に
彼は 笑顔で微笑んだ。
「卒業おめでとう。亜紀」
夏空みたいな 笑顔。
「…っ…じゅ…じゅん……純…っ!」
人目もはばからず
私は純に抱きついた。
確かめるように
必死に純にしがみついた。
「…亜紀…ごめんな…」
純のごめん には色んな意味が含まれている気がした。
クリスマスに行けなかった事
急にいなくなった事
何も言わなかった事…
言われなくても伝わってくる想い。
抱き締める純の力が強くて
何だかもう
それだけで分かり合えた気がした。