夏色のキミ〜sea side
桜と夏空
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暗闇に
桃色の花びらが
ふわりと舞い降りる。
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暖かな陽が射す
四月の朝
チャイムの音に急ぐ生徒達を横目に
桜の木の下で足を止めたまま
その男の子は
ぼんやりと空を見上げていた。
その姿から
私は何故か目が離せなかった。
新しそうな真っ黒な学ランに、舞い散るさくらの花びら。
たかが人の後ろ姿なのに
何故だかその背中は私にとって
儚く、美しく見えた。
どうしてだろう
金縛りになったみたいに
体が動かない。
すると
私の視線に気付いたのか 彼は ゆっくりとこちらを振り返った。